提案したテーマについて
AGC株式会社は、ガラスや化学品など幅広い分野で培ってきた材料技術を農業へ応用し、新たな農業資材の開発を進めています。今回提案したテーマは「農業×化学技術=未来」。近年深刻化している高温ストレスによる作物の収量・品質低下を抑え、収量の安定と生産者の所得向上につなげる資材を提案しました。
猛暑が続くと、植物は本来の生育に必要な働きを十分に保てなくなり、生育の遅れや収量・品質の低下が起こりやすくなります。今後も高温の影響が続くことを見据え、植物自身が持つ高温ストレスへの耐性を引き出しながら、既存の栽培方法に取り入れられる対策をつくることが今回の提案の出発点です。
提案内容について
開発中の資材は、植物の生育を支える揮発性のバイオスティミュラント成分と、AGCが持つ材料技術を組み合わせたものです。有効成分を安定的に保持し、作物の周囲へ持続的に届けることで、植物が本来持つ高温ストレスへの耐性を引き出し、収量や品質の低下を抑えることを目指しています。病害虫へ直接作用する農薬とは異なり、植物が本来持つ力を引き出すことを目的とする資材であるため、生育状況、収量、品質などを総合的に確認しながら効果を評価します。
深谷市では、すでに生産者の皆様にご協力いただき、ナス、トマト、キュウリ、イチゴなどで評価を進めています。今後は深谷ねぎを含め、高温障害に悩むほかの作物へ対象を広げ、どのような作物や栽培条件で、生産者にとって十分な費用対効果が得られるか確認していきます。多様な作物が生産される深谷市だからこそ、実際の農業経営に役立つ使い方を見つけられると考えています。
現在は実証を重ね、試験販売を視野に入れる段階です。採択後は、制度上認められる範囲で活動委託費を活用し、実証に必要な装置、治具、付属品などの整備を進めるとともに、資材の効果を客観的に示すためのデータを取得する予定です。幅広い生産者の協力を得ながらエビデンスを積み重ね、安心して継続利用できる農業資材へ育てていきます。
DEEP VALLEY Agritech Award 2026に応募したきっかけは?
応募のきっかけは、深谷市からご紹介いただいたことでした。より多くの作物を対象に、生産者の皆様と共に実証を進め、農業現場における資材の価値を確認することで、早期に実用化につなげたいと考えています。また、米国の農場で試験できる可能性が示されていることも、将来のグローバル展開を考える弊社にとって大きな魅力となりました。
今後も、深谷市と連携しながら、より多くの生産者の皆様との実証機会を広げていきたいと考えています。実証では、作物の状態を見るだけでなく、収量・品質面の効果と生産者にとっての費用対効果を確認することも欠かせません。生産者の皆様から率直なご意見を伺い、使い方や対象作物を改善しながら、農業現場で継続して利用できる資材を目指します。
新規事業として開発を始めてから約6年。さまざまな評価を重ね、ようやく事業化へ向けた土台が整いつつあります。最終審査では、化学技術が高温障害という農業課題の解決にどのように貢献できるのかを分かりやすくお伝えします。そして、資材の認知を広げるとともに、将来的な実用化を通じて、安定した農業生産と生産者の所得向上に貢献することを目指します。
