FINALIST 2026

株式会社アイナックシステム

「農業×スマート制御=未来」をテーマに、工場自動化技術を基盤とした農業分野への革新的アプローチを提案しています。京都府との共同研究で万願寺とうがらしの自動収穫ロボットが国家プロジェクトに採択されるなど、農業×テクノロジーで着実な成果を挙げてきました。

提案したテーマについて

今回は、農家の収益性向上と省エネルギーを両立する局所土壌ヒーターシステムにより、持続可能な農業経営の実現を目指しています。

提案内容について

従来のビニールハウス栽培では、空気や作物、土壌など全体を温める暖房方式が一般的でした。しかし、この方法では膨大なエネルギーが必要になり、コスト負担やCO₂排出が大きな課題となっていました。そこで私たちが開発したのが、土壌を直接加温する「局所土壌ヒーターシステム」です。

本システムの特徴は、独自開発のコントローラーによるスマート制御にあります。従来のヒーターは全てを同時に稼働させるため、高額な電力契約や大規模な工事が必要でした。一方、本システムではヒーターをグループごとに分け、順次稼働させる方式を採用しています。土壌には温度センサーが設置されており、設定した温度から下がっているグループを優先的に加温するため、無駄な電力消費を抑制できます。さらに契約アンペア数を超えない範囲で制御する仕組みにより、一般的な電力契約での運用が可能となっています。

ある観光イチゴ農園で行われた実証試験では、収量は従来比で2倍以上に増加しました。ランニングコストは約半分に抑えられ、重油代は100万円から50万円に削減。電気代増加分を差し引いても約43万円のコスト削減を達成しました。さらにCO₂排出量は52.5%減少し、環境負荷の低減にも寄与しています。

作物の生育にも顕著な変化が見られました。ヒーターを利用した区画では根が細かく広がり、栄養吸収が促進されていることが確認されました。実際に「厳寒期の2月・3月でも安定収穫が可能になり、追加予約を受けられた」「重油補充は1回だけで済んだ」といった農家の声をいただいています。

また、従来900万円ほどかかっていた導入コストは、本システムにより約300万円に抑えられる見通しです。電力消費量も1/3から1/4まで低減でき、農業経営の省力化と高収益化を同時に実現する技術として普及を目指しています。

DEEP VALLEY Agritech Award 2026に応募したきっかけは?

昨年のDEEP VALLEY Agritech Award 2024にも応募経験があり、常に新しい技術を農業の現場に届けたいという思いから今回もエントリーしました。創業以来、毎年新たな製品を世に送り出してきた中で、農家の経営に直結する暖房コスト削減というテーマは特に重要であり、深谷市のように農業が盛んな地域でこそ価値を発揮できると考えています。

深谷市は関東有数の農業地帯であり、多様な作物が生産される地域です。夏は猛暑、冬は厳しい寒さに見舞われる気候条件の中で、省エネルギーと収量確保を両立できる技術は、農家の経営を支える大きな武器となります。今回の応募は、深谷市で技術を活用していただき、地域農業の持続可能性向上に寄与したいという思いが背景にあります。

まだ規模の小さい企業ですが、農家出身のメンバーも在籍しており、現場の課題を肌で理解しています。大切にしているのは農家にとって本当に役立つ技術であることです。スマート制御による局所加温システムはその理念に沿ったものであり、農家が安心して導入できる実用性を重視しています。最終審査に向けては、大賞を目指すとともに、多くの方にこの技術の可能性を理解していただきたいと考えています。