FINALIST 2026

株式会社エンドファイト

株式会社エンドファイト(つくば大学・茨城大学発スタートアップ)は、ギリシャ語で「植物内生菌」を意味する社名の通り、微生物研究を基盤に事業を展開しています。

提案したテーマについて

長年の研究で構築した「dark septate endophyte(DSE)」の大規模ライブラリを活用し、植物の潜在能力を引き出し、環境ストレス耐性や生育促進、花芽分化や栄養成分量向上等を実現することを可能とします。気候変動や肥料・農薬コストの上昇といった課題に直面する農業に対し、生育促進や環境ストレス耐性向上を実現する持続可能なモデルを深谷市から広げていくことを提案しました。

提案内容について

DSEは植物の根に共生する菌類で、菌糸を伸ばして土壌細菌と植物をつなぐ役割を果たします。人の腸内細菌が健康を支えるように、DSEは植物の成長や耐性を支える存在です。植物が持つ潜在能力を遺伝子レベルで引き出し、生育促進・花成や結実の誘導・病害抵抗性の向上など幅広い効果を発揮します。また、根圏環境を整え、通常は吸収が難しい養分を取り込むことを可能にし、病原菌の侵入を抑えるなど生態系とのバランスを保つ役割も担ってくれます。

茨城大学では数十年以上にわたり国内外から菌株を採取・選抜し、世界最大規模のDSEライブラリーを構築してきました。この豊富な資源を活用することで、作物や地域ごとの課題に合わせた最適なソリューションを提供できます。導入は既存の育苗プロセスに培養土を置き換えるだけで、コストも従来の農法とほとんど変わらず、農家にとって負担の少ない仕組みです。

実証試験ではさまざまな成果が得られています。トマトの養液栽培では収量が20%以上増加し、糖度の向上も確認されました。高温条件下では通常半数が枯死する環境で90%以上の作物を生存させることも可能としております。イチゴでは開花・着果を早め、収穫までを10日程度短縮しました。また、ある作物では品種改良せずに含有成分量が40%向上するなど付加価値の向上にも寄与しています。

深谷市ではすでに地元農園や企業と連携し、いちごを中心にDSE菌を活用した苗生産の実証を進めています。実用段階に入った技術は現場で広く活用しつつ、伸びしろのある技術はチャレンジ精神を持つ農家とともに研究開発を進め、普及と価値向上を目指します。DSEは肥料削減や環境負荷低減、収益性向上を同時に実現できるとともに、栽培方法や菌の組み合わせによりより高い効果の実現や付加価値を多用に創造することが可能であり、長期にわたって農業の持続可能性に大きく貢献できる技術だと考えています。

DEEP VALLEY Agritech Award 2026に応募したきっかけは?

弊社は過去にスタートアップ支援を受ける中で本アワードを紹介され、昨年のファイナリストに選んでいただきました。深谷市のように行政が主体となって農業イノベーションを推進する事例は全国的にも珍しく、このアワードは農業分野の課題解決に特化した貴重な舞台だと考え、今年もエントリーさせていただきました。

DSEを始めとした共生菌技術は、まだ市場理解が十分に進んでいるとは言えません。しかし、その分だけ大きな可能性を秘めており、農業の未来を変える鍵になると確信しています。微生物資材は単なる生育促進にとどまらず、気候変動への対応、肥料や農薬の削減、そして品質や食味の向上といった多様な効果を一度に実現できる力を持っています。その価値を正しく伝え、農業現場や産業全体と共に高めていくことが必要だと考えています。

深谷市は多様な農産物を生産する地域であり、DSEの効果を検証するには最適なフィールドです。弊社単独では難しい規模での研究開発も、行政や地域の農業法人と連携することで推進でき、次世代の農業産業全体を高める取り組みに発展させることができます。

最終審査に向けては、受賞そのものを目指すとともに、この技術の意義をより多くの方に理解していただきたいという思いがあります。DSEが持つ「ゼロをプラスに変える力」を深谷市で実証し、全国、そして世界へと発信していきたいと考えています。